統合失調症とは

幻覚や妄想という症状が特徴的な精神疾患です。
それに伴って、人々と交流しながら家庭や社会で生活を営む機能が障害を受け(生活の障害)、「感覚・思考・行動が病気のために歪んでいる」ことを自分で振り返って考えることが、難しくなりやすい(病識の障害)、という特徴を併せもっています。
以前は「精神分裂病」が正式の病名でしたが、「統合失調症」へと名称変更されました。

原因・発症の要因

<原因ときっかけ>

統合失調症の原因は、今のところ明らかではありません。
進学・就職・独立・結婚などの人生の進路における変化が、発症の契機となることが多いようです。
ただそれらは発症のきっかけではあっても、原因ではないと考えられています。
というのは、こうした人生の転機はほかの人には起こらないような特別な出来事ではなく、同じような経験をする大部分の人は発症に至らないからです。

症状

<幻覚・妄想>

幻覚や妄想は統合失調症だけでなく、ほかのいろいろな精神疾患でも認められますが、統合失調症の幻覚や妄想には一定の特徴があります。

幻覚

実際にはないものが、感覚として感じられることです。
統合失調症で最も多いといわれる症状は、”聴覚についての幻覚”つまり、誰もいないのに人の声が聞こえてくる、ほかの音に混じって声が聞こえてくるという幻聴(幻声)です。
本人を批判・批評する内容、命令する内容、本人を監視しているような内容が代表的です。
周りの人からは、幻聴に聞き入ってニヤニヤ笑ったり(空笑)、幻聴との対話でブツブツ言ったりする(独語)ように見えるため奇妙だと思われ、その苦しさを理解してもらいにくいことがあります。

妄想

明らかに誤った内容であるのに信じてしまい、周りが訂正しようとしても受け入れられない考えのことです。
迫害妄想、関係妄想、注察妄想、追跡妄想などの内容が代表的でこれらを総称して被害妄想と呼びます。
ときに、誇大妄想を認める場合もあります。
妄想に近い症状として、考想化声、作為体験、考想伝播、のように自分の考えや行動に関するものがあります。
思考や行動について、自分が行っているという感覚が損なわれてしまうことが、こうした症状の背景にあると考えられることから自我障害と総称します。

<生活の障害>

先に述べた幻覚・妄想とともに、生活に障害が現れることが特徴です。

会話や行動の障害

話のピントがずれる、話題が飛ぶ、相手の話のポイントや考えが掴めない、作業のミスが多い、行動の能率が悪いなど。
症状が極端に強くなると、会話や行動が滅裂に見えてしまうこともあります。

感情の障害

“自分の感情について”と”他人の感情の理解について”の両者に障害が生じます。
自分の感情についての障害とは、感情の動きが少ない、物事に適切な感情がわきにくい、感情を適切に表せずに表情が乏しく硬い、それなのに不安や緊張が強く慣れにくいなどの症状です。
また、他人の感情や表情についての理解が苦手になり、相手の気持ちに気付かなかったり、誤解したりすることが増えます。
こうした感情の障害のために、対人関係において自分を理解してもらうことや、相手と気持ちの交流を持つことが苦手となります。

意欲の障害

仕事や勉強をしようとする意欲が出ずにゴロゴロばかりしてしまう(無為)、部屋が散らかっていても整理整頓する気になれない、入浴や洗面などの身辺の清潔にも構わない、という症状として認められます。
さらに、より基本的な意欲の障害として、他人と交流を持とうとする意欲、会話をしようとする意欲が乏しくなり、無口で閉じこもった生活となる場合もあります(自閉)。

<病識の障害>

病識とは、自分自身が病気であることあるいは幻覚や妄想のような症状が、病気によるものであることに自分で気付くこと・認識できることを言います。
統合失調症の場合にはこの病識が障害され、多くの場合、普段の調子とは異なることや神経が過敏になっていることは自覚できますが、
幻覚や妄想が活発な時期には、それが病気の症状であると言われてもなかなかそうは思えません。

治療が進み病状が改善すると、自分の症状について認識できる部分が増えていきます。
ほかの患者さんの症状については、それが病気の症状であることを認識できるので、判断能力そのものの障害ではないことが分かります。

治療

<薬物療法の位置づけ>

外来・入院いずれの場合でも、薬物療法と心理社会的な治療を組み合わせて行います。
心理社会的な治療とは、”精神療法”や”リハビリテーション”などを指し、薬物療法なしに行う心理社会的な治療には効果が乏しく、
薬物療法と心理社会的な治療を組み合わせると相乗的な効果があることが明らかとなっています。
薬物療法か心理社会的治療のどちらかと二者択一で考えるのではなく、いずれも必要であることを理解しておくことが大切です。

<リハビリテーション>

用いられる方法は、病状や生活の状態により様々です。
病気や薬についてよく知り、治療の参考にして再発を防ぎたいとの希望がある患者・家族のためには「心理教育」、
回復直後や長期入院のために身の回りの処理が苦手となっている場合には、生活自立のための取り組み、
対人関係やコミュニケーションにおける問題が社会復帰の妨げとなっている場合には、認知行動療法の原理を利用した「生活技能訓練」、
仕事における集中力・持続力や作業能力の回復をめざす場合には「作業療法」、
就労のための準備段階としては「作業所」など、個々の患者さんの病状に合わせて利用していきます。

参照:「統合失調症」(みんなのメンタルヘルス)
(http://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_into.html)

統合失調症を扱った作品など

●ビューティフル・マインド A Beautiful Mind/シルヴィア・ネイサー
参照:「ビューティフル・マインドウェブサイト」
(http://www.abeautifulmind.com/)

●ドキュメンタリー映画ドコニモイケナイ
参照:「ドコニモイケナイ公式サイト」
(http://dokonimoikenai.com/)

●福福荘の福ちゃん
参照:「福福荘の福ちゃん」(Wikipedia)

●シャイン
参照:「シャイン」(Wikipedia)

平成30年4月4日編集