障碍者雇用の取り組み 第4回
株式会社 二和印刷紙業 常務取締役 山田 慎二さん
印刷会社として紙を使った社会貢献
印刷会社として紙の力を使い、たくさんの人に情報を提供していきたいと思っています。
これまでに発達障がい者を3名雇用した事のある、株式会社二和印刷紙業常務取締役山田慎二さんにお話を伺いました。
― 二和印刷さんの業務内容を教えて下さい。
山田 紙に印刷出来るものは基本何でも印刷します。一般のお客様からよりも、同業の印刷会社様からのご依頼が多く、同じ業界内での専門的な印刷をしています。
― 障がい者雇用を導入されたのはいつ頃からですか?
山田 2年前からです。事務と検査的な部署で2名雇用していました。
― 障がい者雇用を導入されたきっかけは?
山田 障がい者の方を雇用する事により、人との接し方に変化が起こり優しさが生まれ、コミュニケーション能力が上がると聞き、興味を持ち始めました。また、国の助成金の部分もありますが、働く仕事があれば給料が稼げて自立へと繋がる。様々な方に働く場所を提供する事が、国や社会への恩返しだと思っているので導入しました。
― 障がい者の方を雇用するにあたって勉強された事はありますか?
山田 障がい者の方を雇用されている企業さんにお話を伺って、声のかけ方、接し方の勉強をしました。
― 障がい者の方とその上司の方は頻繁に面談をされる事で、互いに打ち解ける機会が多く得られそうですが、他の従業員の方と打ち解ける為に工夫された事はありますか?
山田 お昼の休憩時間に、食堂でみんなと食事をとりながら話すことでコミュニケーションをとることを心がけました。仕事の面では、大勢の人から仕事を依頼するのではなく、障がい者の方と他の従業員との懸け橋となる担当者を置き、スケジュール管理や仕事依頼の窓口を作りました。
― 実際に発達障がい者の方を雇われてどうでしたか?
山田 想像以上に作業を覚えるのが早くて驚きました。私達としては、良いペースで予想以上の仕事をしてくれていたので、採用して間違っていなかったと思いますし、雇用させてもらえて良かったです。しかし、2人とも期待に応えようと頑張り過ぎてしまったんでしょうね。上手く出来ないという事に対して苛立ってしまうことがあり、それが積み重なって彼ら自身の中で上手く処理が出来なくなってしまったようです。私達も、緊張を解いて和ませよう、早く独り立ちさせてあげよう、彼らの居場所を作ろうと色々考え、配慮したつもりでしたが、逆にそれが障がい者の方を苦しめてしまったようで…。私達の勉強不足ですね。
― その方達は、どれぐらいの期間、勤められていたのですか?
山田 1年半ぐらいです。不安はありましたが、彼らは真面目に仕事に取り組んでいたので私達から見て好印象でした。
― フルタイムで働かれていたのですか?
山田 最初はフルタイムでした。体調に合わせて時間を短くしたり、休養出来る日数を増やしたりと調整していました。
― その方達を雇用されたポイントって何ですか?
山田 面接をした時に、『コツコツ作業をしてくれそうだな』と感じて採用しました。
― 一般的に履歴書で8割決まると言われていますが、やはり、その通りですか?コツコツ出来そうだな等、分かりますか?
山田 もちろん、履歴書・面接だけでは分からないというのが本音ですが、字の綺麗さ・受け答えは重視しています。
― 面接となると一般的にポイントとされるのが、人柄・意欲・職能スキル・経験・経歴・知識と言われていますが、山田さんの採用する1番のポイントは?
山田 人柄ですね。特に『真面目にコツコツ頑張る人』これに尽きますね!ゆっくりでも良いからコツコツ仕事が出来る人は、周りが評価してくれる。周りから好評価を聞くと本人も嬉しいし、採用した私達も嬉しいですよね。また、それとは別に私が先輩によく言われていたのは、「雇って失敗と思わない」「自分の大切な子供、彼氏、彼女、親の様に愛せる」という想いがあるかという事です。採用か不採用かを決める際、最後にいつも自問自答しています。
― 健常者の方、障がい者の方問わず採用面接は、どのぐらいの頻度で行っているんですか?
山田 毎年2〜3人ぐらいは新卒で採用しようと考えています。中途採用の場合は経験者を優先に、正社員・アルバイトを含め、頻繁に面接を行っています。
― 御社の社屋を拝見させていただいて正直、身体障がい者の方を受け入れる体制が出来ていないと思うのですが、もし身体障がい者の方を雇用するとなった時、設備に対して、どこまで対応していただけるのでしょうか?
山田 現状では体制は整っていませんが、私達がその方を必要だと思って採用しているので困っている場所があれば、どこでも直します。最初は、1人の為にスロープを作ったとしても後々、スロープが必要な他の方にも活かされるわけですから、1人への投資が、他のたくさんの人にプラスになっていくと思っています。障がい者の方もそうですが、性別や特性等を活かせる職場を作る事が面白いと思うんですよ。ニーズに応え、環境を整えている企業に出会い一生懸命働く中で、その企業を愛してくれる事を知っていますから、たった1人の要求であったとしても何とかしたいという想いがあります。
― 他にも障がいの区分がありますが、今後はこのような障がい者の方を雇ってみたいなという希望はありますか?
山田 真面目に業務をこなしてくれる方なら本当にどなたでも終身雇用したいと強く思っています。
インタビュアーのコメント
たった1人、どんな小さな事でも次に繋がる、未来に繋がると信じ、明日への投資をし続けていく山田さん。天から与えられた職務という意味で『天職』という言葉があります。私にもいつか天職が見つかるのかな、と思っていましたが、「会社の為に何かをしたい!役に立ちたい!」「仕事が楽しい!」と感じる事が出来たら、それはもう『天職』と呼べるのかもしれません。
山田さんとお話をさせてもらって、新しい視点を持つ事が出来ました。
子育て情報誌 きらきら
二和印刷さんが手がける子育て情報誌『きらきら』を拝見しました。山田さんが「ママが読むものはママが作る」とおっしゃっていたように、読者と同じ立場の編集者がみえるので、幼い子を持つ私にもタイムリーな悩みの話題が多く、ついつい読み込んでしまうほど興味深い情報誌でした。
発行:二和グループ (有)アド・フューチャー